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2018.02.23 (金曜日)

フィリピン視察

平成30年2月12日~2月15日、フィリピンへ視察に行ってきました。

訪問先は

1.フィリピンマニラ     フィリピン航空本社

2.     〃       JNTO(日本政府観光局)
3.     〃       いすゞ(現地法人)
4.     〃       聖アグスチン教会(世界遺産)

2月12日(月) 福岡空港発 マニラ入り
2月13日(火)
   ①フィリピン航空本社
   ② JNTO(日本政府観光局)マニラ事務所設置準備室
2月14日(水)
   ①いすゞ(現地法人)
   ②聖アグスチン教会(世界遺産)
2月15日(木) フィリピン発 福岡空港着

参加者
①川崎 祥司 県議 ②前田 哲也 県議 ③ごう まなみ県議 ④里脇 清隆 県議
随行職員
国際観光振興部 岩田次長、日向主任

1.フィリピンの概要
 フィリピンは7,000を超える島からなり、面積299,400㎡の国で、2015年の国勢調査による人口は約1億98万人と発表されているが住民登録をしていない人も多く、実数は1億2,000万人とも1億3,000万人とも言われている。
 国民の約80%がカトリック、約10%が他のキリスト教で、国民全体の90%がキリスト教徒で、アセアン唯一のキリスト教国である。
フィリピンは大きく3つのエリアがあり、首都マニラを中心とするルソンエリアに約5,700万人、セブを中心とするビザヤエリアに1,950万人、ダバオを中心とするミンナダオエリアに2,350万人で、特に首都マニラには1,300万人が集中し、人口密度は東京の約3倍の大都市を形成している。
 公用語はタガログ語と言われるフィリピン語と英語であるが、タガログ語は主に首都マニラから半径150㎞内で使われる言語で、国全体では100の人種と75の言語があると言われている。
 スペインの植民地であったことと、また第二次大戦中の3年間は日本の統治下に置かれていたこともあり、高齢者の中にはスペイン語や日本語を話せる人もいる。
 平均年齢は24歳と極めて若く、識字率は96%で英語が流暢なこともあり、アメリカのコールセンター等の進出もみられる。
経済成長率7%の高い成長率で、またアメリカ、中近東、日本をはじめOFW(海外労働者)が人口の10%、労働人口の20パーセントの約1,000万人もいるという。
 所得は大卒で最低一日1,000円から1,500円で、月20,000円前後、中間層で10万円~20万円だそうだが、富裕層と言われる高所得者が400万人いるそうだ。
 首都マニラは人口密集地であるが、道路網の交通インフラの整備が進んでおらず、慢性的な交通渋滞で、わずか数キロメートルの移動も1時間かかるほどである。
 特に朝は学校が始まる午前6時から7時の通勤・通学時間帯、役付き職員の通勤時間帯である9時台の2度交通渋滞があるそうで、現地の人は当たり前のように感じているようだ。
道路を走っている車は、ジープニーと呼ばれる乗合バスはかなり古いものもあるが、一般の乗用車は比較的新しい車が多く、高級車も少なからず見られる。
 都市開発によって造られたマカティー地区はマニラ最大の市街地で大きなビルが立ち並び、スーパーをはじめとする商業地帯でその周りにオフィス群、さらにその周りに高級マンションなど居住地域が広がっており、ここに住む住民はかなりの富裕層である。
 このマカティー地区は、その昔、農業地帯であったが蚊が大変多く、農業者が働けないほどの地域で、荒廃地となっていたところをフィリピンの財閥であるアヤラコーポレーションが開発したそうで、ちなみにマカティーとは「痒い」という語源だそうだ。
この地域に建てられたビルやホテルは50年間の借地契約が結ばれており、間もなく契約期間の50年を迎え、契約更新ができないビルも出ているそうで、解体更地にしなければならないという。
東南アジア訪問ということで、かなり暑いと覚悟して行ったが、今回の訪問がフィリピンで最も過ごしやすい時期だったこともあり、日本の初夏から雨季前の季節と同じぐらいの気候で、外を歩いても汗ばむこともなく過ごすことができた。

2.視察先および、視察の目的

今回のフィリピン視察は、
第1にフィリピン航空訪問で、長崎空港へのチャーター便、定期便就航に向けての可能性を探るための要望活動。
第2に日本政府観光局(JNTO)マニラ事務所設置準備室を訪問し、長崎県への観光客の同行とさらなる観光客誘致に向けての要望活動。
第3に世界遺産の聖アグスティン教会を訪問し、観光施設でもある世界遺産の維持管理について。
第4にいすゞ自動車の現地法人を訪問し、現地採用の労働者であるフィリピン人の教育と労働へ対する意識の持ち方を視察し、将来の長崎県への労働力としての可能性についての4つのテーマで首都マニラを中心に伺った。
特に昨年8月に中村知事が訪問したフィリピン航空本社への訪問は、より具体的な方針について話し合うことができ、大変有意義な視察であった。
今回の視察は観光振興対策がメインということで、長崎商工会議所観光消費拡大委員会委員長の嶋崎真英長崎自動車(株)代表取締役、長崎文化放送山本栄治営業戦略部長にも参加いただき、具体的戦略のお手伝いをいただくこととした。

3.フィリピン航空本社訪問

■中村知事からの親書渡し
 
フィリピン航空本社訪問では、生憎、社長がコースター授賞式で不在だったが、シーラ・トーマス企画担当部長をはじめ、販売セールス担当、海外担当などの役員4名が我々を迎えてくださった。
 自己紹介の後、中村法道知事からフィリピン航空 ハイメ・バウティスタ社長宛の親書を手渡した。
 親書は「昨年8月のフィリピン航空訪問のお礼と、フィリピン~長崎間のチャーター運航および、定期航路開設に向けて実務者レベルでの協議を進めているが、実現に向けてさらなるご高配を賜りたい」という内容である。

■進捗状況とフィリピン航空からの提案 

 今回の我々訪問団の大きな目的は、キリスト教関連遺産の世界遺産登録が今年7月に見込まれることから、そのタイミングでのチャーター便の運航の実現に向けての可能性の発掘と、将来の定期便就航に向けての要望であった。
 まず、昨年8月の中村知事が訪問の折に要望した「チャーター便運航」についての検討について進捗状況を尋ねたところ、長崎~フィリピン間の計画としてはあるが、現実的には何も進んでいないとのことである。
 現在、フィリピン航空の定期便は羽田、成田、関西(大阪)、中部(名古屋)、福岡の5空港、9路線に就航している。
特に2013年のビザ発給要件緩和に伴い、訪日客数が大幅に増加しているが、最近、観光客に人気の高いのは札幌、広島、沖縄だとのこと。
 応対していただいたメンバーの一人が2年前に福岡から入り長崎のハウステンボスへ行ったとのことで、その時に感じたことで、長崎には英語が話せるツアーガイドがいなかった。
 しかし、長崎については、福岡との交通アクセスも良く、長崎巡礼と福岡ショッピングなど絡めた計画はできそうで、プロモーションは難しくないと思うのだがフィリピン国内における長崎の知名度不足を指摘され、まずは、
①フィリピンから日本への旅行者が急増している中で、「長崎」を売り込む努力が足りていない。
 7月に開催される「旅行博」でのブース出展、ならびにインターネットでの観光セールスの実施。
②フィリピン航空観光部の担当者を長崎への招聘を依頼してはどうか
など、提案をいただいた。

■具体的な取り組みへ

我々訪問団はフィリピン航空側へ、チャーター便運航の実現に向けて、さらに具体的な提案を求めた結果、7月の潜伏キリシタン関連遺産の世界遺産登録の時期に間に合うように、旅行プランの作成その他、長崎県として取り組む課題を明らかにすることができた。
①まずは、長崎を知っていただくために、福岡空港を利用した長崎への巡礼などの旅行プランの作成。

②長崎空港を利用したチャーター便運航による旅行プランの作成。
特に4泊~6泊のプランで、156席を埋められること。
長崎だけではなく、福岡のショッピングなども絡めたプラン作成。

フィリピン航空側からは、日本の観光業者、ホテル業界とともに、これらの計画をもって提案するならば、4月には会場を設定し、フィリピンの関係団体に対してプレゼンテーションを行える機会を作る。との確約をいただいた。
担当窓口は当日同席していた営業担当のライアン氏が行うとのこと。


■所 見

フィリピン航空訪問は単なる視察ではなく、昨年8月の中村知事の訪問を実現させるために要望活動として伺ったが、話をする中で、まず感じたことは「長崎」の認知度が低いということである。
フィリピンからの訪日観光客数が大幅に伸びている中、日本全国の観光地が売り込みを行っていることが判明した。
 会話の中で、札幌、広島、沖縄の人気が高く、特に札幌という地名が多く出たが、観光地として注目を浴びているだけではなく、旅行業者を巻き込んだ営業活動が活発なのだろう。
岐阜県も観光プレゼンテーションを計画しているそうで、長崎県の取り組み方が一歩も二歩も遅れていることを痛感した。
やはり県の担当者だけではなく、旅行業者をはじめ、観光業界を絡めた「官民連携」の活動が重要であり、具体的なプランを持っての売り込みを行う必要がある。
 今回の訪問で、先述のとおり具体的な提案をいただくことができたが、これらは約束であり、我々もフィリピン航空側の提案に必ず応える責務がある。
特に、潜伏キリシタン関連遺産の世界遺産登録の期待が高まる中、この機会を逃さないよう必ず実現させなければならないと感じた。

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4.日本政府観光局(JNTO)マニラ事務所設置準備室訪問

■日本政府観光局の概要

 日本政府観光局は海外の主要都市20カ所に事務所を構え、独立行政法人として外国人の訪日旅行を推進するための活動を行う政府機関である。
近年、急激な訪日観光客数の伸びを示しているフィリピンでは、昨年3月からマニラ事務所設置準備室を設け、法人登記等の手続きを進めている。
本年4月には法人登記の手続きが完了し、正式な事務所を構える予定。
現在は、登記完了を待ちながらも、仮事務所にて訪日観光客の誘致に向けての活動を展開している。
フィリピンには日系企業の進出は1,440社で世界第8位だそうで、400万人と言われる富裕層がおり、アジアの国や地域への旅行者が420万人いる中で、訪日旅行者40万人は、まだまだ伸びしろが広く可能性を秘めていると思われる。

■訪日フィリピン人の推移

 訪日フィリピン人の数は、2014年から急激に伸びはじめ180,000人と対前年比70%増で、その後も伸び続け、2017年は420,000人と、世界第9位、東南アジアで第3位の訪日客数となっている。
 その要因は2013年のビザ発給の緩和により、以前は訪日の都度ビザの申請が必要だったが、2014年からは1回のビザ発給で何度でも訪日することができ、リピーターの訪日が増えたことがみられることと、同じく2013年締結されたオープンスカイ協定により、LCCの就航が可能になったことによるものと思われる。
 渡航者の割合は団体に比べ、圧倒的に個人が多く、ウェブサイトでの申し込みが70%である。
訪日を選択する情報源として、訪日経験者や在日フィリピン人からの口コミが多い。
 在日フィリピン人は38万人に上り、中国、韓国に次ぎ3番目に多い。
訪問先は2017年の統計で、東京の244,000人、大阪が199,000人と圧倒的に多く、九州では1位が福岡の15,600人、長崎は2位だが5,020人にとどまっており、今後の戦略を考えていかなければならない。

■他県や旅行会社の動向

 フィリピンでは5月のイースター休暇といわれる長期休暇の時期と、10月から12月にかけてのクリスマス休暇があり、この期間が訪日の需要シーズンである。
フィリピン人は10人から20人の大家族で生活している家庭が多く、特に富裕層は家族一緒に旅行することが普通で、中にはメイドも一緒に旅行している。
 さて、話を伺う中で、すでに多くの旅行会社や自治体がフィリピンをター
ゲットとした旅行商品やコンテンツを生み出して、長崎県としても早急な取り組みを行う必要があると感じた。
 フィリピン航空での話の中に出た岐阜県がプレゼンテーションの計画を立てていることに加え、日本政府観光局で得た情報では、長野県がフィリピンの有名なタレントを招聘し、県が独自で観光PRを展開している。
また、旅行会社が2月7日から開催された旅行博で新しい商品として、沖縄空港へのチャーター便を運航させる旅行プランを売り出している。
 日本本土への旅行費用が約2,000ドルに対し、沖縄プランは988ドルで、しかも2時間半で行けるという魅力を発信している。

■長崎県が取り組むべき戦略

 敬虔なクリスチャンのフィリピン人は、聖地巡礼によく行かれるようで、長崎県もストーリー性を持たせるプランを組み立てることで可能性も膨らむのではないか。
 アイデアとしてはフィリピン航空の考えと同じく、旅行会社を回るだけではなく、具体的なプランを創出することが重要である。
①潜伏キリシタン関連遺産のストーリー性を活かしたプラン
②他の地域を線で結ぶパッケージプランの組み立て
③情報発信のコンテンツの創出とプレゼンテーションの実施
等である。

■所 見

 別添資料の「訪日フィリピン人市場の概況」を見ると、訪日観光客の伸びと傾向が分かるが、初めての訪日客が求めるものとして、①食、②ショッピング、③景勝地観光、④街歩き、⑤テーマパークである。
 また売り出されているプランの旅行日程としては4泊5日、5泊6日が主流であり、長崎県としては長崎空港を活用する場合、フィリピン航空で伺った意見と同様に、長崎だけではなく、他都市を結んだプランの設定を考える必要があると思われる。
 今後は県当局だけでは無理があると思われることから、長崎の魅力をしっかりとプロデュースできる機関との協力と、旅行会社や観光関係機関との連携を密にする必要があると感じた。
先述したように、潜伏キリシタン関連遺産の世界遺産登録が目前に迫っていることを考えると、早急な取り組みを求めるものである。

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5.いすゞフィリピン工場

■いすゞフィリピン現地工場の概要

ホテルから南西へ約40㎞、高速道路を使って約1時間のラグナ州ビニアン町にある工業団地の中に敷地面積131,622㎡(約40,000坪)の「いすゞフィリピン現地工場」がある。
いすゞ自動車と三菱商事が各35%、フィリピンの財閥アヤラコーポレーション、ユーチェンコグループが各15%出資の資本金10億ペソ、日本円で約22億円で1995年8月会社登記、1996年6月に生産開始で、年間16,000台の生産能力を持ち、2017年は13,289台を生産。
従業員は646名で、管理、技術職の13名の日本人を除くほとんどが現地のフィリピン人である。
 いすゞの自動車の得意分野であるトラックを主としてSUVなどの乗用車も製造しており、フィリピンでのトラックシェアは52.6%で、18年連続でシェア1位を獲得している。
 工場で働くフィリピン人の賃金は日本円で月平均35,000円だそうだ。
 工場内の見学をさせていただいたが、テレビ等で見る日本の工場のようなロボットでの溶接などは見受けられないが、部品等が整然と並ぶ工場内ではフィリピン人が作業に励み、我々に対しても気持ちよく挨拶してくださった。
 ロボット化の導入されている日本国内の工場は、タクト方式で2分に1台が完成されて出てくるが、フィリピン工場では人力作業で行うため、20分に1台のペースである。
 ロボット化を導入しない理由は、そこまで需要がないということと、現地の労働力事情もあるからとのことだが、生産性を上げる為、今後、製造ラインの設備投資も検討するとのこと。

■フィリピンの車事情

 フィリピン人の車保有は、人口1,000人あたり33台で全体には年間47万台の需要がある。
 乗用車の価格は日本で販売されている同程度のものとさほど変わらず、国民の平均収入からみて、車はかなり高価なものと感じたが、
 トラック全需はかつては90%が中古車だったが、近年は新車需要が急増し、2016年には、25%が新車トラックとなり、アセアン主要5か国の中でも需要が右肩上がりで伸びており、経済成長率7%という状況をうなずかせるものである。
 フィリピンでは車検制度はないが、毎年、車の登録が必要で、政府が15年を超える車は登録できない新たな方針(トラック15年規制)を打ち出し、まずトラックなどの大型車両の登録ができなくなっている。
 2018年1月からユーロ4排ガス規制をアセアン内で最初に導入し、また、4.5トンを上回るトラックの市内乗り入れ規制を実施している。
 これらの状況からみても、さらに需要が伸びていくものと思われ、いすゞ自動車にとっては追い風といえる。
■フィリピン人労働者のスキル

 今回の工場視察の目的は、全人口の10%、労働人口でみると20%にあたる約1,000万人が、海外労働者というフィリピン人のスキルと日本の労働力不足の補填としての可能性を探るべく伺った。
 いすゞフィリピンの社長によると、フィリピン人は勤勉で、アセアンの中ではスキルは高い方だとの評価で、英語が堪能であることから、指導もしやすく、マニアル通りに教えたことはちゃんと守れるとのこと。
 日本へ行きたい労働者が多いそうで、日本工場にも常時10名を派遣している。
 勤勉さは製造業に向いているが、今年から優秀な人材についてはメカニックとしても研修を始めたそうで、1年間の研修を行って、ディーラーへの派遣を行う予定とのこと。

■所 見

 長崎県では国に対し、農業分野での外国人の就労を認める国家戦略特区を要望しているが、福祉・介護の分野をはじめ、就労者不足も問題となっており、将来の外国人労働者の確保という課題に向けて、フィリピン人も視野に入れて考えることができるのではないか。

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6.聖アグスティン教会(世界遺産)

■聖アグスティン教会の歴史

 フィリピンには、ルソンエリアに三つ、ビザヤエリアに一つの計四つの世界遺産に登録されているカトリック教会がある。
 今回の視察は、フィリピンで最初にできた聖アグスティン教会を訪問先に選び、実際に使われている世界遺産の観光資源としての活用と建物および展示品等の維持管理について伺った。

 マニラ市街地に石畳で西洋風の建物が建ち並ぶゼネラル・ルナ・ストリートの横に石造りの荘厳な聖アグスティン教会がある。
スペインの統治下に置かれていた1581年、フィリピンで最初の教会として建てられた。
当初の建築材料は竹や木材を用いて建てられたが、火災等で二度崩壊し、現在の建物は三回目の建築で、1586年着工し1607年完成。
500年に一度の大地震にも耐えられるよう大きな柱で支えられ、幸い先の大戦でも残った建物で、フィリピン製の素材と外国製の素材を使用し、高い湿度に耐えられるよう、サンゴと石灰に卵の白身を用いており、築後400年以上経つが、ほとんど傷んでいない。
 当時の最高の技術で建てられた技法で、この教会の建築技術で他の教会も建てられるようになった見本的な建物である。

 教会に隣接して旧アグスティン修道会の建物があるが、現在は博物館として資料等の展示がなされている。
 教会を正面から見ると、左右にあったであろうと思われる鐘の棟が左側にはない。1880年のマニラ大地震で亀裂が入り、取り除かれたとのこと。鐘は博物館に展示されているが、世界遺産に指定されたため、鐘の棟を新たに増築することができない。

観光関係での入場料は200ペソ(日本円で約500円)で、現地の方は少し安くしている。
聖堂内に入ると、歴史をうかがわせる什器や備品、像が置かれている。
天井一面の装飾は、彫刻のように見えるが、だまし絵の技法によって描かれたもので見事なものだ。
広い聖堂には当然マイク設備はなかったので、祭壇から降りたところの柱には一段高い説教台が設けてあるのは、日本では見ることのない設備である。
300年前に作られたマリア像は当初、金や銀の装飾がなされ、また、幼少のキリスト像を抱いていたらしいが、長い年月の中で盗難にあったそうで、残念なことである。
フィリピン人にとって、この教会で結婚式を挙げることは憧れで、多い時には一日に10組も式を挙げることもあるそうだが、ただ、この教会で結婚式を挙げられる人は、基本的に両方がフィリピン人であること。
観光客は多い時でバス7台から10台ほど来る時があり、一度に入らないように制限をすることもある。
■世界遺産としての教会の維持管理

 長い歴史と貴重な建物や資料の維持管理や補修は教会にとっても大変な問題で、不法侵入や盗難防止、また、いたずら防止等のセキュリティ対策としては防犯カメラを設置している。
維持管理に要する資金については、200ペソの入場料では電気代にも足らず、また、施設や展示品の補修等に対する支援を何度申請しても、世界遺産の登録はなされているが、国の文化財の指定を受けてないためか分からないが、一度も支援を受けられない。
主な資金は教会がいくつもの学校を経営しており、そこから資金を調達している状況である。
スペイン大使館の理解で、外壁の補修費用など、たまに出していただくこともあるらしいが、大変苦労しているというのが現状だと感じた。

■所 見

 この教会は、古い歴史とバロックとフィリピンネイティブ式のコンビネーションによるユニークな建築方式で、建物自体の価値と残された展示品の価値が評価されて世界遺産に指定されたそうだが、世界遺産の指定を受ける以前から教会として、維持管理を大切に取り組んでこられてきたことがわかる。
 世界遺産の指定を受けたことで、観光客の訪問が増えたことで、むしろ苦労されているのかもしれないと感じた。

 施設そのものを見せる聖アグスティン教会とストーリー性を重視した長崎の潜伏キリシタン関連遺産との違いはあるものの、維持管理における予算の確保は重要な課題である。
 特に頑丈な造りの聖アグスティン教会に比べ、木造の部分が多い長崎の教会は、さらに慎重な維持管理を行わなければ、今後、多くの観光客の訪れによって、傷みや、備品等の管理状況も心配される。
 本年夏の世界遺産登録が期待される今日、県のしっかりとした方針と取り組みを求めるものである。

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